<争いのない円満な相続のために>
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12.遺言執行者は必ず指定すべきか
(1)遺言執行者を指定しなかったためのトラブル
2007年8月2日付朝日新聞(東京本社版)に、60歳の男性の投書が掲
載されていました。
それによると、この男性の父親が自筆証書遺言を残していたので、その
遺言書に基づいて相続手続をしようとしていました。ところが、兄弟の一
人が相続財産である銀行預金を自分の口座に入れたまま、遺言内容が不満
だったので、その相続財産の分配を拒んだというのです。
この男性は、裁判するのも大変なので、遺言書よりも少ない取り分を提
示し、それで相続手続が完了したとのことでした。
遺言書で相続分を指定してあれば、当然それにしたがって相続財産を分
けるべきことになります。ですので、相続分を指定する遺言の場合には、
本来は遺言執行者は必要ではなく、相続人が自分たちで遺言を執行して、
相続財産を分ければ良いはずです。
ところが、この男性の場合のように、相続人と相続人の関係は、ある相
続人が多く相続財産を得れば、多の相続人が得る相続財産は少なくなると
いうように、お互いの利益が反する関係にあります。
だから、このようなトラブルが生じたと言えます。
遺言書を作ることで相続をめぐるトラブルが避けられるはずなのに、そ
れでもトラブルが生じてしまったのは、遺言を遺して他界された方にとっ
て無念なことでしょう。
この男性は、「せっかく遺言書を残しても、遺言執行人を指定しておか
ないと、トラブルになる」と書かれていました。
(2)遺言執行者を指定することのメリット
上の例でわかる通り、遺言書を作成する際には、遺言執行者を指定して
おくのが無難です。
非嫡出子を遺言で認知するような場合には、必ず遺言執行者が必要にな
ります。
その他の場合、必ずしも遺言執行者が必要ではないということになりま
すが、上で説明してきた事情から、遺言執行者を指定するに越したことは
ありません。
相続人同士の関係が、お互いの利益が反するものであることから、遺言
執行者を決めずに「みんなでやってくれ」という状態にすることは、トラ
ブルを生じさせるもとにもなります。
結局、相続人全員の代理人としての遺言執行者を選任することで、この
者に責任を持って遺言の執行を行わせることが、遺言した内容を実現させ
る確実な方法なのです。
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