【相続分の譲渡】

(1)相続開始前の譲渡

 相続とは、相続財産に占める、各相続人が受け取ることのできる割合です。ここでは、相続分を相続人ではない第三者に譲渡することの可否を説明します。

 まず、相続開始前(被相続人の死亡前)には、相続人はその相続分を譲渡することはできません。
 これは、たとえ可能性は高くとも、被相続人の死亡前は相続人はいまだ相続分を有するとは言えず、単に相続財産を得ることへの「期待権」があるに過ぎないからです。


(2)相続開始後の譲渡

 これとは反対に、相続開始後であればたとえ遺産分割協議前であっても、相続人は相続分を譲渡することを民法が認めています。これは、被相続人の死亡と同時に相続は開始されて相続財産は共同相続人の共有財産となるので、共有権として譲渡できるからです。
 
 たしかに、まだ相続人間で遺産分割もしないうちに相続分を譲渡せずとも、遺産分割手続が終わるまで待てばいいようにも思えます。しかし、遺産分割協議がまとまるまでには時間がかかることもあるため、相続人の中には早く
相続財産を換金したいと考える方もいます。
 そうした場合に相続人が自分の相続分を包括的に第三者に譲渡し、現金等を得ることができるかわりに、遺産分割手続から抜けることができるのです。

 そして、相続人から相続分の譲渡を受けた第三者は、その相続人が有していた一切の権利義務を包括的に承継したわけですから、当然に、遺産分割協議に参加することができるのです。

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