9.株式会社以外の会社の設立

(1)LLC及びLLPの新設

 現在、株式会社設立以外にも、LLC及びLLP設立が選択肢の一つとして考えられるようになりました。
 LLP・LLCは外国では以前より存在しましたが、日本では2005年の法改正(新会社法及び有限責任事業組合契約に関する法律の新設)によって、初めて認められるようになりました。LLCは、新会社法では、合同会社として規定されました。

 これによって、従来からあった日本の会社の形態ー株式会社・有限会社・合名会社・合資会社に加えて、新たに合同会社が設立できるようになり、会社ではなく組合であるLLPが設立できるようになりました。


(2)LLC・LLPの特徴及び株式会社との違い

@株式会社の大きな特徴として、「所有と経営の分離」が挙げられます。これは、会社を実質的に所有するオーナーである株主には、経営の意欲も才能もないので、会社の経営をプロの経営者に任せるということです。
 それに対して、LLP・LLは、「所有と経営が一致」する組織であると言えます。言ってみれば、自分の仲間内で仕事をやっていきたいというときに使われるのが、LLC・LLPです。

 このように、仲間内で所有と経営を一致させたいときに従来作られてきた会社として、合名会社や合資会社があります。しかし、特に合名会社では、所有と経営を一致させることができるものの、大きな欠点がありました。それは、会社の負った債務について、社員(出資者)は、無限に責任を負わなければならないことです。このため、出資者は自らの出資した額を超えて責任を負わされるリスクを覚悟しなければならず、出資者を集めにくいという問題がありました。会社ではありませんが、民法上の組合も同様です。
 これに対して、株式会社の場合に株主の責任は有限であり、自らの出資した額の範囲を超えて責任を負うことはありません。

 この点について、LLC・LLPは、所有と経営が一致しているにもかかわらず、出資者の責任は出資の額に限定されています。これにより、合名会社や民法上の組合と比べ、出資者が安全に出資でき、資金を調達しやすくなりました。つまり、LLC及びLLPは、「所有と経営の一致」及び「有限責任」という、これまでは両立しえなかった合名会社・株式会社のメリットを両立させた、いわば「いいとこ取り」の制度と言えます。

Aそして、LLP・LLCのもう一つの特徴は、株式会社のような厳格な機関が要求されておらず、比較的自由な組織構成が認められていることです。


(3)どのような事業がLLC・LLPに適しているか

 経済産業省にホームページに掲載されている「LLPに関する40の質問と40の答え」の「問5.LLP制度はどういう分野に活用できるのか」の答えを見ますと、
@大企業同士が連携して行う共同事業
A中小企業同士の連携
Bベンチャー企業や中小・中堅企業と大企業の連携
C異業種の企業同士の共同事業
D産学の連携
E専門人人材が行う共同事業
F起業家が集まり共同して行う創業 
 などが書かれています。

 たとえば株式会社の場合には、実質的所有者が株主ですので、株式会社で働く専門家が会社の売上に多大な寄与をしたとしても、会社の利益は第一に株主に配当されますので、必ずしもその専門家が大きな利益を手にできるとは限りません。
 これに対して、LLC・LLPの場合には利益をいかに配分するのかを自由に決められますので、売上に寄与した専門家に大きな利益を配分することが可能です。
 そうしたことから、専門性の高い事業について、LLC・LLPが適していると考えられます。


(5)LLC・LLPの設立手続

 LLC・LLPの設立手続は、比較的簡素な形で行うことができます。とはいえ、基本的な手続は必要です。

@組織の概要の決定
 LLC・LLPを設立するにあたり、まず最初に組織の概要を決めておく必要があります。具体的には、名称(商号)、事業目的、本店の所在地、構成員、営業年度、出資額等について、予め決定しておきます。構成員(LLCでは社員、LLPでは組合員)は、LLCでは1人いればいいのですが、LLPを設立するためには2人以上が必要です。
 なお、名称(商号)については、LLCであれば「合同会社」、LLPであれば「有限責任事業組合」の文言を入れる必要があります。

A定款・組合契約書の作成
 組織の根本的な規則として、LLCであれば定款を、LLPであれば組合契約書を作成する必要があります。それぞれ、定款に記載しなければならないと法定された事項(絶対的記載事項)や、定款に記載しなければ効力を生じない相対的記載事項等があります。

B設立登記
 LLC・LLPの設立に際して予め定めた出資金額が出資されたならば、それを証明する書類を提出して、本店所在地の法務局で設立登記をします。これにより、LLC・LLPが設立されます。
 なお、LLCを設立してから何年かして株式会社にしたいと考えた場合には、社員(構成員)全員の同意を得ることで、LLCから株式会社への組織変更を行うことができます。他方、LLPはあくまで会社ではなく、組合に過ぎません。ですので、LLPから株式会社への組織変更を行うことはできません。

C株式会社設立の場合との、その他の相違点
 LLC・LLPについては、公証人による定款の認証は不要です。ですので、定款は2通を作成したら、1通を登記所に提出し、もう1通を会社で保存します。
 なお、登録免許税は6万円です。したがって、LLC・LLPは株式会社よりもずっと安価に設立することができます。
   

 
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