8.株式会社設立後の諸手続き

 株式会社設立登記申請後、補正がない場合には約1週間程度で登記が完了し、無事に株式会社が設立されたことになります。
 ここからは、株式会社設立後の手続きが必要になります。

 具体的には、税務署への届出、都道府県税事務所・市区町村役所への届出、社会保険事務所への届出、労働基準監督署・ハローワークへの届出が必要です。


(1)労働保険(労災保険・雇用保険)の加入手続き

 株式会社設立後、急ぎ手続きしなければならないのは、労働保険の加入です。

 労働保険には、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために給付される労災保険と、労働者が失業した
際に支給を受ける雇用保険があります。

 このうち、まず最初に手続きすべきなのが、労災保険の加入手続きです。労働者を雇用してから10日以内に労働基準監督署へ行って、労災保険加入の手続きをしてください。

 その後、ハローワークへ行って、雇用保険の加入手続きを行ってください。
 ハローワークへ行く際は、会社の登記簿謄本とともに、雇う社員の雇用保険被保険者番号等を用意しておくと、便利です。
 また、社員との間の労働契約書や、賃金台帳・出勤簿等の提出を求められることもあります。

 なお、雇用保険料は会社と労働者で負担しますが、労災保険料は会社が全額負担します。

 これらの労働保険は、一人でも労働者(アルバイトやパートを含む)を雇う場合には必ず加入する必要があります。また、労働者を雇用してから10日以内と、手続きの期限が短いので、ご注意ください。


(2)社会保険の加入手続き

 法人であれば、すべて社会保険加入が義務付けられています(実際には守っていない会社も多いようですが)。
 社会保険には、労働者とその家族が医療を受ける際に適用される健康保険、年金を受給するための厚生年金、介護サービスを受けるための介護保険があります。 

 健康保険組合に加入するか、または政府が管掌する健康保険に加入することになりますが、一般に組合の方が給付のサービスが良いので、加入できる組合があれば、そちらに加入するのが得策でしょう。

 社会保険庁で加入手続きをする際には、被保険者全員の年金手帳に加えて、すでに従業員を雇用している場合はその給料明細3か月分を持参し、取締役の報酬についても提示する必要があります。

 なお、社会保険料は会社と労働者が折半して負担します。


(3)税務署での手続き

 税務署には、会社設立から2ヶ月以内に「法人設立届出書」を提出します。その際に添付しなければならない書類は、
 @会社の登記簿謄本
 A会社の定款のコピー
 B会社の設立趣意書
 C会社設立時の貸借対照表(開始貸借対照表)
 D株主名簿
 です。

 また、給与を支払う会社はすべて、「給与支払事務所の開設届出書」を、事務所の開設から1ヶ月以内に税務署に提出する必要があります。
 この届出書には「役員」の欄もありますので、たとえ従業員を雇用せずに役員に報酬を出すだけの場合でも提出する必要があります。

 さらに、「法人設立届出書」を提出する際に、「青色申告の承認申請書」も提出してお
くといいでしょう。

 青色申告とは、一般の記帳より水準の高い記帳をし、その帳簿に基づいて正しい申告をする人については、 所得の計算などについて有利な取扱いが受けられる制度です。

 青色申告を行うと、税務上の様々な特典があります。
 具体的には、
 @確定申告の際に、最高で65万円の青色申告特別控除を受けることができる。
 A青色事業専従者給与制度(青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業に専ら従事している人に支払った給与は、届出書に記載された金額の範囲内で専従者の労務の対価として適正な金額であれば、必要経費として認めると いうもの)が使える。
 B純損失の繰越しと繰戻し(事業所得などが赤字になり、純損失が生じたときには、そ
 の損失額を翌年以後3年間にわたって、各年分の所得から差し引くことができる制度)が使える
 C貸倒引当金(事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者で、その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金などの貸金の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下の金額を貸倒引当金勘定へ繰り入れたときは、その金額を必要経費として認めるという制度。ただし、金融業では3.3%)が使える。

 という4点が大きなメリットです。

 青色申告をするには、期末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記(一般的には複式簿記)の原則に従って記帳する必要があります。

 この他に、給与の支払を受ける人の人数が常に10人未満の会社については、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することによって、本来は毎月納付しなければならない源泉所得税を、半年に一度の支払で済ませることができ、便利です。


(4)地方自治体での手続き

 株式会社設立後には、税務署に「法人設立届出書」を提出するだけではなく、都道府県と市町村にも、それぞれ届けが必要です。
 都道府県税事務所及び市町村税事務所には、それぞれ「法人設立届出書」の用紙がありますので、それらに記入した上、会社の登記簿謄本のコピーと定款のコピーを合わせて、それぞれに提出します。


 
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